俺様ホストに愛されて
「妃芽?」
久しぶりに聞く太一の穏やかな声に、懐かしさを感じている余裕はない。
「……なに?」
「あ……いや、元気かなって……思ってさ」
歯切れ悪く、気まずそうに言う太一。
「用がないなら切るから。もうかけて来ないで。じゃあ」
どこまでも勝手な太一に、正直ムカついた。
「いや、そんなこと言う為に掛けたんじゃなくて」
「だったらなに?」
今更、話すことなんてないよね?
太一には彼女がいて、あたしも前に進んでる。
もう、関係ないはずなんだ。
太一は少し間を置いた後、信じられない一言を言い放った。
「……今、妃芽の部屋の前にいる」
「えっ?なんで?」
意味がわからない。
「どうしても、会って話したいことがあるから」
そんなこと言われても……困るよ。
「……話すことなんてないでしょ?あたし達、別れたよね?」
今になって、勝手すぎるよ。