俺様ホストに愛されて
もうすっかり慣れた細い路地を通って、お店の扉を開ける。
カランカラン
耳に響く音にも、もうすっかり慣れてしまった。
「妃芽ちゃん、いらっしゃい」
いつもの笑顔で出迎えてくれたヒロさんは、あたしの後に続いて入って来た亜希を見てさらに目を細めた。
「友達〜?珍しいね。いらっしゃい」
「どうも」
亜希はぎこちなく笑いながら、ヒロさんに向かって軽く会釈した。
「どこでも適当に座って。団体さんが来たら変わってもらうことになるけど、ソファー席も空いてるし」
珍しく店内には、カウンターに座るお客さんが2人しかいなかった。
後ろ姿しか見えないけど、若いカップルのようだ。
派手な巻き髪の女の子が、甘えるように彼氏の腕に寄り添っている。
あたしとリュウも、他の人から見たらあんな感じなのかな。
「お友達は何飲む?」
ソファーへと座ったあたし達の元に、ヒロさんがおしぼりを持ってやって来ると、亜希に向かってそう訊ねた。