俺様ホストに愛されて
「辰巳さん、ご指名です」
ボーイに耳打ちされ、残念そうにしているマヤに詫びて席を離れた。
ガヤガヤうるさい店内。
いつもより賑やかなシャンパンコールは、客がこの店で一番高級なシャンパンをホストに入れたからだろう。
若い新人ホストが客に煽られボトルに口を付けてシャンパンを一気飲みしている。
そんな横を素通りして、指名が入った席へと向かった。
「やっほー、リューちん!!」
げっ
にこやかに笑いながら俺に手を振るカエデを見て、あからさまに嫌な顔をして見せる。
「なにしに来たんだ?今すぐ帰れ」
「ひっど〜、冷たいなぁ。せっかくカエデ様が会いに来てあげたというのに」
顔をくしゃくしゃにして笑うその様は、綺麗なドレスにそぐわない。
「頼んでねぇよ」
「いいじゃんいいじゃん、まぁ座りなよ。ちょっと顔見に来ただけだからさ」
タバコに火を付け煙を吐き出しながら、空いた方の手で自分の隣をトントン叩く。
ったく
そう言われて渋々腰を下ろした俺は、ヘルプで付いてたホストに下がるよう目で合図した。