溢れる蜜に溶けて
右手に持った手提げが重たい。軽い持ち物しか入れてないのに…。
さっきのやり取りを思い出しただけでも、目頭に熱が寄って涙が頬を伝う。
遙くんに意地悪を言われることも、怖い口調で何か言われることも、冷たい瞳で私を見ることも、ずっと前から知ってて。
気にしないように、遙くんの視界になるべく入らないようにって、そう思って高校生活を過ごしてたのに、たった数日で崩れるなんて思ってませんでした。
目尻をすっと人差し指で拭えば拭うほど、伏せた睫に乗って涙は落ちる。
それと同時に、今まで遙くんに言われてきたいろんな言葉が隅から隅まで、脳内を走った。
震えた足が折れて小さく膝を抱え、溢れる涙は止まることを知らない。
うう…っ。も、なんでこんなに涙が出るんでしょうか??
遙くんが意地悪なのはいつものことで~~っっ!
これじゃ、まるで私が遙くんのこと――!
「泣くな」
まとまらない考えがとうとう私の閉まってた心を混乱させた時、頭上から息を軽く吐いたような深みのある声が聞こえる。
隠れた顔を上げれば、ムッと唇を結んだ遙くんがいた。