溢れる蜜に溶けて

言葉を失い瞳がゆらゆら揺れる。



「遙、くん」

「立て。さっさと帰るぞ」



涙で濡れた頬を拭う暇も与えず、アスファルトにくっつく指先を放すように、腕を引っ張った。


その拍子で膝が曲がり遙くんの胸へダイブ…しそうになったのですが、どうにか頑張って体を起こしました。うう。


掴んだ腕を離さない遙くん。逃げることの許されない距離。強く奪われる思考。潤んだ瞳に映る遙くんの何か言いたげな表情。



「…わけ、わかんねぇ」

「へ??」

「勝手にバイト始めるし、知らねぇ男といるし、連れて帰ったと思ったらどっかで立ち尽くして泣いてて。わけかわんねぇよ」

「あ…。ごめっ、遙くん(ごめんなさい)――っ!」



ごめんなさい、と心の中で呟いた単語は喉の奥で掻き消され、熱を持つ遙くんの両手が頬に触れる。



「心配させんな」



涙の痕に指先が伸び、息も忘れるくらい動悸が速まって胸が甘い音を立てました。
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