溢れる蜜に溶けて
なんだかとっても珍しい組み合わせに、私は少し唇を結んで、隣で歩く朝比奈くんを横目で追った。
すると、朝比奈くんもこちらへ視線を向けてぽつり、ぽつりと小声で言葉を繋ぐけど、人が行き交う騒がしい廊下の端っこで掻き消されて。
通りかかった遙くんのクラスの開いた扉に、ふいっと視線が揺れその姿を探したけど、歩く速さにはかなわず、見つけることはできない。
「この間、バイトの帰りにさ」
「えっ?」
「ずっと誘おうと思ってたんだけど…」
隣を見れば朝比奈くんが恥ずかしそうに頬を朱色に染めている。ごくり、と喉を鳴らす音がした。
動く唇のタイミングに合わせようとして、私の小さな唇が言葉を言いたそうにするけど。
「あ――(あのっ)」
「来週の花火一緒に行こう」
突然すぎる発言に呆気にとられ、金魚のように口をぱくぱく開いたり、閉じたりを繰り返すだけだ。