溢れる蜜に溶けて

なんだかとっても珍しい組み合わせに、私は少し唇を結んで、隣で歩く朝比奈くんを横目で追った。


すると、朝比奈くんもこちらへ視線を向けてぽつり、ぽつりと小声で言葉を繋ぐけど、人が行き交う騒がしい廊下の端っこで掻き消されて。


通りかかった遙くんのクラスの開いた扉に、ふいっと視線が揺れその姿を探したけど、歩く速さにはかなわず、見つけることはできない。



「この間、バイトの帰りにさ」

「えっ?」

「ずっと誘おうと思ってたんだけど…」



隣を見れば朝比奈くんが恥ずかしそうに頬を朱色に染めている。ごくり、と喉を鳴らす音がした。


動く唇のタイミングに合わせようとして、私の小さな唇が言葉を言いたそうにするけど。



「あ――(あのっ)」

「来週の花火一緒に行こう」



突然すぎる発言に呆気にとられ、金魚のように口をぱくぱく開いたり、閉じたりを繰り返すだけだ。
< 19 / 29 >

この作品をシェア

pagetop