溢れる蜜に溶けて

瞳が左右に流れて最後には遙くんへと焦点を合わせた。


うぐっと喉に張り付いた言葉。


乾いた空気から漂う湿っぽい夏の匂い。


冷房を入れ忘れた部屋に纏う熱のせいか。それとも目の前で何か言いたそうに唇をきつく結ぶ幼なじみの遙くんのせいなのか。


答えは曖昧で明確に正解を私には教えてくれなくて。


ただ首筋を伝う生温い汗がやけに気分を悪くしてるのはわかります。



「…帰る」

「あ、はい」



絡まる視線を外した遙くんは、そっぽを向き、私に聞こえないような小さい声を発しひとりごとのように呟いた。


背中を見せるとドアノブを回し足音を立たせる。



~~っっ!

やっぱり遙くん怖かったです…。
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