溢れる蜜に溶けて
「9時上がり、だよね??」
「そうですけど(う~ん。朝比奈くんも9時に終わるんでしょうか??)」
「僕も9時に終わるから、あのっ。途中まで送ってくよ」
途切れて、繋いで、返ってきた言葉に喉が鳴る。
数秒経過し、首を縦に大きく深く一回下げるのが精一杯です。
きゅうっと胸の奥で締まる音を閉じ込めた。下がったままの顔を前へ向けると朝比奈くんと瞳がぶつかる。
なんだかとっても恥ずかしくてすぐにそらしてしまいました。
朝比奈くんは遙くんと違って、態度も口調も声色も怖くなくて優しいです。
すごくいい人なのに…どうしてかここにいない遙くんと変に比べてしまう今日の私は、やっぱりおかしいです。
じゃあまたあとで、と朝比奈くんが一言残し、レジから離れるのを見送った直後に自動ドアが開くのが視界の端に映った。
自然とそちらへ視線が移動するのは当たり前なのですが…
「~~っっ」
私服姿で予告もなく、いきなりバイト先へ足を運ばせた遙くんを前に言葉の数々が混乱し、うろたえる始末です。