ファインダー越しの恋人


『出来るか?』

「…やってみる」


昔やってた事を思い出しながら目を閉じて気持ちを作る。

カメラの向こうに居るのは大好きな彼。

思い込ませるように考えると本当にそういう気持ちになるから不思議。

私はこれからファインダー越しの恋人を演じる。


完全にスイッチが入ったのか、シャッターが切られるたび、気持ちが高まる。

彼氏が居るのに…今の私はファインダーの向こうに居る拓真が好きで好きでたまらない。


「んっ…!」


愛しい相手にするように微笑んだと同時に、拓真の切なく苦しそうな顔が向けられたかと思えば、突然塞がれた唇。


「んっ…ふぁ…」


拒まないといけないのに、自ら求めてしまうのは演技に入り込んでるせいか、それとも……

唇が離れた時には頭が熱に浮かされたようで…朦朧とする意識の中、シャッターの音を聞いた気がした。



【END】



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