世界を濡らす、やまない雨
◇
「杏香ちゃんも鬼ごっこする?」
幼稚園の庭で一人で砂山を作っては崩しを繰り返していた私は、同じ組の女の子の声で顔を上げた。
「鬼ごっこ、する?」
私に話しかけてきたのは、同じ組の中でも特別可愛い女の子だった。
人見知りで、幼稚園に入園したときから他の子達とうまく馴染めなかった私は、入園してから三ヶ月が過ぎても一人で遊んでいることが多かった。
人の輪に入っていけず、仕方なく一人遊びを始める私に、話しかけてくる子はほとんどいない。
だから私はすごく驚いてしまって、大きく目を見開いたまま、しばらくその可愛い女の子に返事ができなかった。
「する?しない?」
私があまりにも長いこと黙っているので、女の子は少々苛立ったらしい。
語気を強めて、私に問いかけてきた。