世界を濡らす、やまない雨

「早く決めて。みんな待ってるんだから！」

彼女は怒ったようにそう言うと、後ろを気にするように振り返った。

彼女が振り返った方を見ると、そこには彼女の友達が数人と、私の組の担任の先生が立っていた。

彼女の友達はみんな目を丸くしながら私のことを見ていて、担任の先生は彼女のことをじっと見守っている。

担任の先生の顔を見て、可愛い女の子に私を誘うようにと促したのは先生なんだろうと思った。

私は先生がいつも連絡帳で「杏香ちゃんはあまりお友達と遊ばず、ひとりで遊んでいることが多いです」と母に伝えているのを知っていたのだ。

母は先生からの連絡帳を見る度に思案顔で、

「自分から仲間に入れないなら、誘ってもらったときには『はい』って答えなさい」

と私に言った。