世界を濡らす、やまない雨
私は静かに靴を脱ぐと、音も立てずにひっそりと廊下を歩いた。
そして、薄暗い灯りが漏れる寝室のドアへと手を掛ける。
しん、とした廊下に二つの荒い息遣いと微かにベッドが軋む音が響く。
寝室のドアの向こうで何が行われているのか自覚しながら、私はそっとドアを開いた。
「怜────……?」
そのとき、
「……んっ、れ……い」
甘い吐息と共に、私とは違う誰かが怜の名前を呼んだ。
薄暗がりの寝室の中、見えるのは私とは違う誰かに覆い被さる怜の背中。
怜の長い指と絡み合う、私とは違う誰かの鮮やかなネイルが施された細い指。
シーツに流れる、ライトの加減で金色にも見える長い髪の毛。
そして寝室いっぱいに広がるのは、甘い甘い柑橘系の香り。
胸がざわつく、吐き気を感じるくらいの強い匂い。