世界を濡らす、やまない雨


先生はみんなをバランスよく追いかけたあと、私を鬼ごっこに誘ってくれた女の子にタッチした。


「捕まっちゃったぁ」

彼女は残念そうに笑ってそう言ったあと、十数えて駆け出した。

駆け出した彼女は、まっすぐに私を狙ってやってくる。

走るのが遅い私は、あっという間に彼女に捕まった。


「杏香ちゃん、タッチ」

私を捕まえた彼女が笑う。

そうして、勢いよく私から逃げていった。

一瞬だけど、私には笑った彼女の口元が意地悪く歪んでいたように思えた。

再び鬼になった私は、逃げる回る他の子達を追いかけた。

追いかける私のすぐ近くを、鬼ごっこに誘ってくれた女の子が走り抜けていく。

その距離を見たとき、捕まえられるかもしれないと思った。

捕まえたら、彼女がまた鬼になる。

そのことまで頭が回らなかったし、さっき自分を捕まえた彼女に仕返ししたいなんていう悪意は全くなかった。

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