世界を濡らす、やまない雨
食卓に伏せてうとうとと眠っていた私は、玄関の錠が開く音で目が覚めた。
顔を上げると、真っ暗だった窓の向こうはうっすらと白み始めている。
あんなにも強く降っていた雨は、いつの間にかやんでいる。
けれど激しい雨の名残として、筋のように張り付いた無数の痕が窓を汚していた。
ぼんやりとしていると、玄関のほうから小さな物音が聞こえた。
「怜……」
私は弾かれたように立ち上がると、夢中で玄関へと駆けていった。
玄関で靴を脱いでいた怜は、突然リビングから飛び出してきた私を呆然と見つめる。