世界を濡らす、やまない雨


今日はもう、怜は帰ってこないだろう。


そのことに絶望しながらも、彼はちゃんと傘を持っているだろうか……、とそんなことばかりが気がかりだった。


窓を打つ雨の音と、部屋に充満し始めた湿気を肌に感じながら目を閉じる。



怜に抱きしめてほしい、と。



私はひさしぶりに強くそう思っていた。


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