世界を濡らす、やまない雨


「覚えてない?俺、角谷(かどや) 永智(えいち)。高三のとき、同じクラスだったよね」


目尻を下げて微笑む笑顔が、彼をほんの少し幼く見せる。


「かど、や……」


……────永智。


唇が、彼の名前をなぞる。


名前が、微笑む彼の顔に少しずつ重なり一致する。


角谷 永智。


目の前に立つその人を、私は確かに知っていた。


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