長い夜の甘い罠【完】


「…落ち着いたか?」

「…ええ、もう大丈夫」


漸く男は私の身を離し、ズボンのポケットに手を突っ込みながら海をじっと眺める。

涙は引っ込んだものの、男へ対する怒りが沸き上がる。

この場で今すぐ復讐してやりたい。

この男が私の家族を刺した様に、私も同じ様に刺してやりたい。

握り拳をぐっと握り締めては、怒りを落ち着かせるのに必死だった。


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