Octave~届かない恋、重なる想い~
「お前らどいつもこいつも俺をバカにしやがって! 特にお前だ!」
私のカットソーの胸元をぎゅっと掴んできた。
ぐいっと片手で布地を引っ張り上げられたせいで、男の眼には私の下着が見えている状態。
さっきまで激高していた男が、嫌な笑いを浮かべつつ耳元で「さあどうする?」と聞いてきた。
周りの先生方は、私が人質に取られているような状況で手出しできずにいるようだったので思い切り叫んだ。
「雅人さん助けて!」
その言葉を合図に、雅人さんが職員玄関ドアを開けて中に飛び込んできた。
まさか来ると思っていなかったのだろう、男は玄関に背を向けて立っていたせいで、雅人さんによって後ろから羽交い絞めにされた。
男はジタバタしていたけれど、雅人さんの方が大きくて力も強かったらしく、まるで歯が立たないようだった。
担任がすぐさま私と男を引き離し、雅人さんに礼をして離れてもらってから寝技に持ち込んだ。
さすが柔道部顧問。
うちのような荒れた学校には、こういった格闘技有段者が配属されることが多い。
「電話してくる!」
教頭先生が職員室へ戻り、電話をする相手は当然警察だ。