Octave~届かない恋、重なる想い~

共に闘うために

 ぽろぽろとこぼれ落ちる涙が、テーブルに一滴。

 ただ、泣くことしかできない自分が情けないと思う一方で、この書き込みに対する怒りが沸き上がってきた。

 許せない。雅人さんが頑張っていることは、ひとつも評価されないまま、雅人さんにはどうしようもないことをことさら意地悪く書き立てられている。

 私は何も知らないまま、ぬくぬくと過ごしていた。

 こんなことなら、私と結婚などしないで、政経塾や労働組合から擁立されて立候補した方が、雅人さんのためになったのではないだろうか。

 自分の存在が足かせになっていると、この掲示板の悪意ある書き込みによって浮き彫りにされた。


「結子、もう、これ以上見ない方がいい」

 雅人さんが、ノートパソコンをシャットダウンした。そして。

「ここに書かれていることのほとんどは、悪意に満ちた嘘だとみんな知っている。気にしないことだ」

 そう言いながら、私の背中を撫でてくれた。
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