Octave~届かない恋、重なる想い~
 そう言って、私の身体をふわりと抱きしめた。


「きゃっ!」


 驚いて声をあげたら、耳元でふふっと笑う声。


「そんなに初々しいと、まるで中学生を抱いているようだ」

「ちゅ、中学生じゃありません!」

「もちろん、知ってるさ。中学生だった頃の君も、社会人になった君も見てるんだから。
 あの頃の君は、きっと俺とこうなる、なんて思いもよらなかっただろうな」

「今も思ってませんでした!」

「それじゃあ、これで実感が湧いただろ、結子」

 
 名前を呼ばれて、ぞくりと震えた。

 ……雅人さんが私の名前を呼び捨てにしたのは、これで2回目。

 10年も昔の中学時代に交わしたあの約束を、もしかしたらまだ覚えていたのだろうか?
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