Octave~届かない恋、重なる想い~
 そのやりとりを、ただ私はドキドキしながら見守るしかなかった。


「みんなが幸せになるためです」


 意外な言葉が、雅人さんの口から発せられた。


「結子さんに初めて会った時、私は社会人で彼女は中学生でした。
 家庭教師として接してきましたが、素直で家庭的な彼女に好意を抱いていました。
 もちろん、その時はただそれだけだったのですが、結子さんもどうやら同じ気持ちだったようです。
 この病室で昨日、久しぶりに会った後、お互いの気持ちを確認して……そういう事、です」


 雅人さんが、私を見た。

 心なしか、彼も照れているように見えたけれど、私はその十倍以上照れて真っ赤になっているはずだった。
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