初恋シグナル~再会は恋の合図~
なおも辻村くんが何か言おうとしていたけれど、そこで丁度先生が教室に入ってきたと同時に1限の開始を告げるチャイムが鳴って、私は慌てて後ろを向いていた身体を前に戻した。
それは会話の終了を意味していた。
……私の知ってる、辻村くんは。
クラスで一番の人気者で。
小学生ながらモテモテだった。
明るくて、カッコよくて、優しくて。
一方、そんな彼とは対照的だった私。
……地味で。
暗くて。
友達も少なくて。
高校2年生になった今、男女関係なくそれなりに友達も多い方だと思う。
だけど、あの頃はちがった。
何をするにもびくびくしていて。
自分に自信がなかった。
臆病で、引っ込み思案で、男子としゃべるなんて、もってのほか。
女子の中の、本当に少数の友達だけとしか関わらない、狭い日常だった。
……だからこそ、自分にはないものをもっていた彼に。