明日なき狼達
 内調が滝沢と手を結んでいた……

 浅井が仕入れて来た情報とは、この事だった。

 内調のNo.2ともいうべき男が、滝沢と繋がっている……

 その話しを浅井から聞かされた澤村は、とてつもない怪物と自分達は対峙してるんだと、改めて思い知らされたのである。

 俺達はただの蟻……

 軍隊蟻は巨像をも倒すと言うが、果たしてそれだけの力が俺達にあるのだろうか……

 身震いがした。見えない恐怖も感じた。

 吉見とダイヤは既に滝沢の手にある……

 辻が言っていた言葉を思い出した。ほぼそれに間違い無いであろう。

 畏れを抱き始めた澤村ではあったが、だからといって今更引き下がる訳には行かないという気持ちも強くあった。

 松山との繋がりだけではない。己の親栄会での上がり目といった事に於いても、滝沢に繋がるラインとは一線を画したいといった思いがあった。

 これは、マジで命を懸けなきゃ……

 匡さん、俺、腹括り直しますよ……

 澤村の行動はそうなると早かった。

 浅井からの情報を松山達に伝え、自分の考えをはっきりと口にした。

「思っていた以上に大きな相手です。もはや素手で立ち向かおうなんて皆さんも考えてはいけません。もっと明確に、滝沢を倒すという意思を強く持つべきです」

 澤村の言葉に対し、児玉や松山達の反応は、何処か微妙な温度差が感じられた。

 その最たる者が加代子だった。

「あんた達、年を考えなよ。あたしらに何が出来るのさ。もうロートルで、人生の終わりを迎えようとしてんだ、あたしも、やっと気付いたよ」

 ベッドに横たわる神谷を見ながらそう言った。

 梶も、

「敵う相手と、そうじゃない相手が居る……」

 と言って、この件とは関わりを断ちたいようなニュアンスの物言いだった。それとは反対に、野島は強硬的な意見を口にした。

 松山は一言も言わず、その目を静かな怒りに燃やしていた。

 意外なのは児玉であった。一番、滝沢とは利害関係の無い彼であったが、

「どうせ残り僅かな命なら、私は最後迄立ち向かうべき相手からは逃げたくない……」

 と口にしたのである。そして、それ以上に以外だったのは、神谷であった。

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