明日なき狼達

襲撃

「決まって五日の日に来るというなら、次は……十日後だな」

「浅井、その間に考えられる全ての事を手配して置いてくれないか」

「判った」

「黄さん、済まん。この御礼は必ず……」

「大丈夫です。気になさらないで下さい。浅井さんに今迄いろいろお世話になってますから、これ位の事は。もし、宜しければ、私もお手伝いしますよ」

「ありがとう。後は我々の仕事だ。だが、何かあったら又頼み事をするかも知れない。その時には……」

 と言って頭を下げた澤村に黄は、

「こちらこそ」

 と言った。

 その日は一旦、黄と別れ、その足で銀座に向かい、松山達の様子を見に行った。

 神谷の怪我の具合は大分良くなっていたが、マンションからずっと出れない事での、見えないストレスが貯まり始めていた。

 野島は怒りっぽくなっていて、面倒を見ている浅井組の若い者に当たり散らしている。

 梶は、ずっと塞ぎ込んだままだ。

 松山も、精神的疲労もあってか、顔に脂が浮きどす黒くなっている。

 加代子に至っては、若々しさが消え、寧ろ年齢以上の老婆のように見える。

 児玉はそういった皆を慰めるかのように、常にいろいろな話しをし、気を紛らわそうとしているが、自分の日課であるストレッチや筋トレは欠かさずやっていた。

 その姿を見て、野島は面にこそ出さないが、益々苛立ちを募らせている。

 一番、気持ちがしっかりしていたのは児玉と、ベッドで寝込んでいた神谷だった。

 神谷は、立ち上がれるようになると、児玉の手を借りながら、一緒に軽いストレッチをするようになった。以前の柔和な表情は消え、年齢を感じさせない闘志を漂わせていた。滴る汗を拭いながら、

「野島さんも梶も、何を落ち込んでるんだい。思い出せよ。四十年前、大学の講堂を占拠してた時の事をさ。何日も篭城してたあの時の事を」

 と、声を上げた。

「俺は篭城側じゃなくあんたらを潰しにかかった方だ」

「野島さん、右も左も関係無いよ。あの時みたいに、一つの想いの元に人が集まり行動する、それが尊いのさ」

「四十年経って全共闘の亡霊が現れたか?」

 野島の顔に幾分笑みが零れた。

 そこに澤村と浅井が顔を出した。

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