明日なき狼達
「おい、何時迄俺達を閉じ込めて置く気だ」

 澤村と浅井の顔を見た瞬間、野島はそう言って詰め寄った。

「野島さん、もう暫くの辛抱です。もう少し待ってて貰えれば、事態は良くなりますから」

「良くなるってどう良くなるんだよ。え、澤村。あの滝沢がはいそうですかって簡単に手を引くってか?な、訳ねえだろうが」

 そのやり取りを黙って見ていた児玉が、浅井をそっと呼び、

「彼は何か打開策を考えてるんですね?」

 と、小声で聞いて来た。

「外の事は、我々に任せて下さい。間違い無いようにしますから」

 その返事を聞いた児玉は、野島の側に行き、

「野島さん、苛立つ気持ちは判ります。この人達だって私達の為に危険を犯してくれてるんですから、とにかく信用して、吉報を待ちましょう」

「吉報てのは、一体どういう吉報なんだ。滝沢ってえ男は、自分に刃向かった相手は、必ず最後迄潰し切らなければ諦めない人間なんだぜ」

「判ってます」

 野島は、判ってますと言った澤村に向き直り、

「おいおい、判ってますって軽々しく……」

 と言い掛けて、澤村の胸倉を掴むなり、耳元で声をひそめて言った。

「殺るのか?」

「野島さん、落ち着いて下さい。とにかくもう少しの辛抱だから」

「なんなら、俺も手を貸すぞ」

「借りにそうだとしても、元本庁のキャリアが手を貸したとなったら拙いでしょう」

「馬鹿野郎、既に拙い事をやってるからこうしてこそこそ隠れてんだろうが!今さら元キャリアがなんだってんだ。そんなもん、今の俺には何も役には立たねえんだよ」

 幾分、出掛かった腹を大きく波打たせながら、呼吸を荒げて詰め寄る野島の後ろから、松山が声を掛けた。

「野島さん、こいつを信用してやって下さい。何をどうするか判りませんが、どっちにしたって私達のような年寄りが加わっても、かえって足手まといになるだけですから」

「へええ、あんたらしくもねえ台詞だな。判った、判ったよ。俺達は黙って此処で滝沢の手に掛かるのを待ってろって事なんだろう、てめえでてめえの首を洗ってりゃいい訳だな」

「野島さん!」

 澤村は何かを言おうとしたが、しかし、そのまま押し黙った。
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