BLOOD§INFECTION





「しっかし、比奈千春。
あんた、化けもんやな。」

ターゲットが現れる現場まで徒歩で移動中、神無さんが呆れ半分、感心半分といった口調で話しかけてくる

「いや、俺もびっくりだから。」


あの時、左目を通して稲妻のような衝撃が両手を貫いた

かと思うと、なにか筋肉強化剤みたいな薬物でも使ったのではないかというほど力が湧いてきたのだ


左目の、力?

いや、そうではない気がする
この左目は単なるオッドアイなはず

だが、左目の方が明らかに常任の視力から飛び抜けている


一人でもんもんと考えていると、今度は申し訳なさそうに神無さんがかろうじて聞こえるような声で呟いた


「………悪かったな。」

「は?」


聞き間違いかと思い、思わず聞き返してしまう


「悪かったっていってんのや!!
…その、あんたが止めるんも聞かんでデュエルなんて勝手にして。」


…−勝手にやってる自覚あったんだ

たしかに文句の一つもいってやりたい気分ではあった

しかし、普段の勝ち気がどこにいったのかというほど、申し訳なさそうにする神無さんの様子を見ていると、そんな気分も自然と消え去った





< 54 / 82 >

この作品をシェア

pagetop