セク・コン~重信くんの片想い~

「終わりました」
止血の為、きつめに巻いた包帯の残りを、救急セットの中にしまいながら、重信は手当ての完了を告げた。
「どーも」
 そう言って、小柴は何気に重信の腫れ上がった頬に触れてきた。
「!?」
 驚いて思わず身体を仰け反らせる重信。
「痛そうだね。これじゃ腫れ引くまでに何日もかかっちゃうだろうね」
 重信は、小柴の全く予測のつかない行動に困惑していた。
「やったの、あんたらですよね」
 重信の言葉に小柴は少し長めの赤メッシュの入った前髪の隙間から、きょとんとした目を向けてきた。
「俺じゃない。やったのは連太だ」
「でも、あんたらは仲間だろ」
 ふっと小さく笑うと、小柴は重信を見た。
「まあね。俺は連太の言うことには逆らえないし、基本楽しいことには参加したいし?」
(……楽しいことって、俺が大寺さんに目つけられてることか?)
 重信にはこの男が一体何を考えているのかが理解できなかった。殴られた頬を心配するような素振りを見せたかと思えば、大寺の考えには賛同しているような口振り。
「それに、君は俺たちの忠告をきかなかったろ?」
 それは、即ち、”アオイには二度と近付くな”というものだ。
「確か、連太が言ったよね? 次アオイちんに近付いたら、萩本くんを殴るって」
重信は小柴の目を見てこう言った。
「でも、俺はそれを受け入れるとは言ってませんけど」
 キッパリと小柴の耳に一度で入るように、それはもうはっきりと。
「じゃあ、俺は引き続き連太のサポートに回んなきゃなんない訳だ? 君がアオイちんから離れない限り、たぶん連太は君をずっと攻撃するつもりだろ思うけど?」
 小柴は包帯の巻かれた人差し指をまじまじと見た後、ゆっくりと保健用の回る椅子から立ち上がった。
「別にいいですよ、それはそれで」
 小柴が椅子から立ち上がったことで、イスに座ったままの重信は彼に見下ろされる形となった。
「個人的にはさ、萩本くんみたいに馬鹿正直な一直線型って嫌いじゃないんだよね。ま、時にイラついてどつきたくなるけど」
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