壊したいから
・・・
壊したかった。

彼の大切な人を、傷付けて、立ち直れなくしたかった。

頑張って、売れて。
あの人と共演したくて、今日まで頑張ったのに。

気付いて、しまった。

だって、あの子犬の様な新米ADを見つめる目だけ、とても優しくて。
自分に決して向けられない視線が、羨ましくて。

悔しかった。

初めての顔合わせで挨拶に行った時。
緊張してうまく言葉が出なくて、それでも笑わずにいてくれた、彼。
好きになるなって言う方が間違ってる。
だって、ずっと憧れだったんだし。
憧れなんて、簡単に好きに変わる。

高鳴る胸を隠しながら、彼の恋人を必死で演じた。

これが、現実なら良いのにって。

でも、あのADのせいで、あたしの心は傷ついた。
だったら、その男同士ってのを利用するしかない。

あたしの中の悪魔が、そう、囁いた。

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