恋をしたのは澤村さん
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「い……おいッ!!」
ゴンッ!!という響きのいい音ともに現実に引き戻され痛むおでこを押さえた。
「いっ!!?……~~~っ!!」
言葉もでない痛みにのたうち回ってからうっすらと目を開けるとボロい天井と誰かの姿が目に入った。
「いつまで人んちで寝るつもりだ、餓鬼」
暴言を吐いているのはこの人なのだろうと姿を目でおう。
はっきりと視界に入ったのは意識を失う前に最後見た顔で弾かれたように布団から飛び起き壁まで後ずさった。
「な………っ!?」
パクパクと動く口は驚きを隠せていなくて指を指したままあたしは狼狽した。
「……なに勘違いしてんのか知らねぇけど取って食いやしねぇよ。まぁさすがに殺さないで、だのまだ死にたくないって言われたときは殴ろうかと思ったけどな」
呆れた顔で近づいてくる彼に体はびくりと、跳ねた。
「んな、警戒すんな」
「ぃたっ!!」
ビシッとおでこに凸ピンをくらっておでこを押さえた。
「……もう大分暮れぇーけど大丈夫か?」
コンコンと叩かれる窓の外はもう夜でずいぶん長いこと気絶していたんだと気づいた。
「………忘れもんねぇな」
荷物をぽんっと投げられて慌てて受けとる。
もしかすると悪い人ではないのかもしれない。
荷物も漁られた形跡はないし、何より体のどこにも変な感じはしない。
ただ、顔が怖いだけなのかな……。
「あ、の……名前」