恋をしたのは澤村さん

「わぁっ!」

「田中さんあんまり前行きすぎたら濡れるよ」

「あ、そっか…」

もうすぐいるかショーが始まる大きな野外水槽の前まで来て島津木くんに止められた。
なかではイルカや少しというか、かなり小さめの鯨の仲間もいる。
水槽のなかを自由に泳ぎ回り時より跳び跳ねる様はまるで人魚のようだ。

「あ、でもジュゴンが人魚なんだっけ?」

「急にどうしたの?
まぁでも、俺からしたらあんなぶよぶよの腹回りの人魚よりイルカの方がよっぽど人魚っぽいけどさ」

「だよね、島津木くんもそう思うよね!」

変な共感をしあいながら鯨やイルカが跳び跳ねても水がかからない場所まで移動しておとなしく席に着いた。

「あとどれくらいで始まるの?」

「んー、一分もないよ」

島津木くんのその言葉通りいるかショーは始まり、イルカだけじゃなくてアザラシやオットセイなんかも出てきた。


「可愛い!」

「女子特有の謎のかわいい出たよ」

「何言ってるの!可愛いでしょ!」

言い合っている間にもショーはどんどんとラストへと向かっていき、あっという間に終わってしまった。
野外水槽から館内に戻っていると島津木くんがあたしの肩を叩いてそろそろお昼を食べようと言ってくれた。
そう言えばもうお昼とっくに回ってたなと自覚したとたんになったお腹の音にあたしは言うまでもなく顔を真っ赤にしたけれど。

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