蓮華〜流レルママニ〜


朝のチャイムが鳴り響く頃、既に私は教室の席に着いていた。今日は遅刻しなかった。いつも通りだと感じていたのは頭だけで、実際は早足になっていたのかもしれない。

少しだけ息切れがする。

…そんなに急いだかな…?

もしかしたら、ホントに風邪かも…。

「おはよう千草、今日は早いね」

学食で話して以来、由真に対する見方が変わったと感じるのは私だけで、由真は変わらずに接してくる。

「おはよう由真。いつも通り来たつもりなんだけどね、早く着いちゃった」

と言って少し咳き込む。

「大丈夫?…風邪?」

心配そうに顔を覗き込んでくる。

「顔色…悪いかな?」

自分でもよく分からず由真に問いかけた。

「う…ん、いつもより元気がない感じかな?」


そっか…。
そう見えるなら、やっぱり少し変なのかも…


蓮と同じく余命を宣告された…
とは言っても、今まで体調を崩した事はおろか、風邪らしい風邪というのさえ、ひいたことがない。

だから、分からない。

今、私の身に起きている鼓動の高鳴りが…

病気によるものなのか…

それとも…


廊下側に座る蓮の方をチラリと見る。

頬杖をついて、ボーっとしているように見える…けどアレは考え事をしている顔だ。
私には分かる。



…!!


…やっぱり何か具合が悪い…

急に吐き気がした…

「千草…!?…」

変化に由真が気付く。

「…やっぱり…何か調子…悪いみたい…」

「大丈夫!?…保健室…連れて行こうか…?」


「うん…お願い…」

そう言って立ち上がると、突然…目眩に襲われ、由真に寄りかかるように教室を出た。

クラスの他の人たちに「大丈夫?」と心配そうに声をかけられる中、
蓮の視線が私を捉える事はなかった。
多分、気付かなかったんだろう…
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