突然現れた王子


男は不安そうな顔で、床に座っていた。


記憶がないなんて、そりゃあ不安だよね。

あたしは男の顔をまじまじと見つめた。

うらやましいぐらいに整ったきれいな顔。

華奢な体に、ほどよくついた筋肉。


きっとモテるんだろうな。

その時、男が口を開いた。


「良かったらさ、しばらくここに置いてくれない?」

「はぁ!?」


男の言葉にあたしは、嫌そうな声をあげた。


「なんでよ!
あたしたち赤の他人だよ!?
友達でもなんでもないんだよ!?」

「お願い!
俺、記憶もないし、どこ行けばいいのか分かんねーからさ…」


あたしから視線を逸らして言う男は、本当に困っているようだった。

あたしは仕方なく、OKを出した。


「…いいよ」




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