突然現れた王子


眠たいのか、ケイタは大きな欠伸をしながら言った。


「じゃあ明日ね。おやすみ」


あたしはそう言って眠りにつこうとした。


「…なぁ」

「ん?」


いきなりケイタに呼び止められて、
閉じていた目を開けた。


「今“本当の俺”は、どんな状態なんだろうな」


呟くように言ったケイタの言葉を、あたしは一瞬聞き逃しそうになった。


不安な声のケイタ。

ここ数日、元気すぎるほど元気だったケイタ。


もしかしたら空元気だったのかもしれない。

不安なのを紛らわすために、
わざとテンションを上げていたのかもしれない。




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