突然現れた王子
電車に飛び乗り、街へと向かった。
ケイタはどこか楽しげな顔をしていた。
ずっと家の中にいたから、出掛けるのが嬉しいんだろう。
「ケイタ」
「ん?」
あたしが呼びかけると、ずっと外を見ていたケイタが、こっちを向いた。
「景色とか見てさ、何か思い出さない?」
あたしが問いかけると、ケイタはまた外を眺め始めた。
「んー、何も」
悲しそうに呟くケイタ。
本当に思い出すことができないのか、
それともここはケイタの知っている景色じゃないのかな?