夢の欠片
ゴォォォォ


何かの音がしていた。聞き覚えはあるが、いったい何の音なのか特定できない。


「手出せ」


いつかの夢で聞いた、殴る蹴るなどの行為を平気でする、非情な少年の声がそう言った。何をする気なのだろうか。悪い予感しかしない。


「嫌だ!」


非情な少年と一緒にいた、殴られた側の少年の声がそう反抗した。この状況は……前の夢と妙に重なる。


「大丈夫だ、一瞬だから」


「だってそれ……」


手に何かをする気なのだろうか。この状況なら、何か酷いことをするのは間違いない。「それ」とは何なのだろうか。最初から変わらず鳴り続ける、勢いのある音が気にかかる。


「お前、学校で『俺』って言ったよな? 俺がいなけりゃ何やってもいいと思ったか?」


「ごめんなさい……」


くだらないことで怒られてるんだな。一人称なんか人それぞれだろうに。


「ダメに決まってんだろ」


「ああ! 離せ離せ! 離してください!!」


腕を掴まれたのか?


「熱い熱い!」


な!? 熱い! なぜだ! 俺の腕まで熱い! そうか! あの音は……ガスバーナーだったんだ!


「うわぁぁ!!!」


熱い! ああぁぁぁあ!
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