夢の欠片
「えぇ、羚弥君が家から逃げ出したー!?」


「うん。さっき羚弥の親戚から連絡があってね。そっちに向かってるだろうって言ってたよー。でも見逃すってさー。また新たに高校に入学させたりとか大変だからって」


「本当!? 確かに私のように、途中から高校に入ったら手続きがめんどくさいからねー。それにしても、戻ってくるなんて!」


「でしょー? だ・か・ら、カレーパーティーなのさー!」


「イェーイ! じゃあ早速準備しないとね!」


私は急いでエプロンをつけた。


「由梨、今度はジャガイモの皮むきできるよね?」


お姉ちゃんがピーラーを出しながらそう言って笑った。


「もっちろん!」


「じゃあ任せるよー。私はカボチャやるからー」


さっと水で洗って皮むきをしながら、お姉ちゃんに恋愛について訊いてみた。


「結局さ、羚弥君とお互いに好きだってことは分かったんだけど、デートとかよく分からないんだよねー。買い物とか、映画とか……遊園地とか? 付き合ったら何したらいいんだろー」


「ほおー。青春だねー。私もそんな時期あったわー」


お姉ちゃんは「いいなー」と笑った。


「デートはね、相手のこと気にするんじゃなくて、自分が行きたいと思ったことを宣言すればいいんだよー。特に女はね! 私も結婚考えてみよっかなー」


「絶対考えた方がいいよ! お姉ちゃんなら絶対幸せにしてくれる人が見つかると思う!」


「そう? じゃあ頑張っちゃおっかな! 羚弥みたいな人が見つかるといいなー」


「え? お姉ちゃんって羚弥君のことが好きだったの?」


驚いて私はお姉ちゃんの顔を見た。


「羚弥やっさしいじゃーん。んでもって、信頼できるじゃん? だらしなかったり、めんどくさがることもあるけど、そういうのは私が支えてあげられるから、全然いいの。私そこそこ有名になっちゃったからさー、芸能人目当てみたいな人じゃなくて、そんな人が見つかったらいいなーってこと!」


「なぁーんだー。てっきり羚弥君が好きかと思っちゃったー」


「もしかしたら……奪っちゃうかもよー!?」


「それはダメー!!」


「じゃあせいぜい頑張りたまえー」


「お姉ちゃんもねっ!」


その時、玄関の扉が開いた。


「ただいまー」


「おかえりー」
「おかえり!」










終わり
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