金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

――最後の夜、私たち三人の部屋はとっても雰囲気が悪かった。

私が本当のことを話さないせいだと解っているけど、責められるのが怖くて言えない。


きっとほかの部屋ではみんな好きな人が誰とか、彼氏とキスしちゃったとか、ガールズトークで盛り上がっているんだと思ったら、有紗と菜月ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


三人が各々のベッドに寝転び無言でいると、菜月ちゃんが携帯を片手にいきなり立ち上がった。



「――――ねえ、この部屋で今から彼氏に電話をかけてもいい?」



おもむろにそんなことを言い出すので、私と有紗は顔を見合わせる。

そしてベッドに座り直した有紗が菜月ちゃんに聞く。



「別にいいけど……ベランダとか出た方が話しやすいんじゃないの?てか菜月ちゃん彼氏いたんだ」


「本当は内緒にしとくつもりだったけど……千秋ちゃん見てたらイライラしてきたから彼と話したくなった」


「…………?」



イライラさせている、というのは自覚があるけど、それがなんで彼氏と話したいっていう欲求につながるのかは解らなかった。

菜月ちゃんは既にスマホを耳に当て、彼が電話に出るのを待っている。


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