金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

――最終日、国際通りでお土産を選ぶのも班行動だったけれど、昨日とは打って変わって有紗と菜月ちゃんは私と土居くんが二人きりにならないよう気を遣ってくれた。


土居くんにも、きちんと向き合わなきゃならないけど……やっぱり先生とのことに答えが出てからそうしたいと私が言うと、有紗も菜月ちゃんも解ってくれた。


だけど少し歩き疲れて、みんなでアイスを食べようということになった時に、二人のガードがこの日初めて緩くなった。

二人とも何のアイスにしようかと迷うことに必死で、お店のショーケースを見るのに夢中になってしまったのだ。


土居くんは、そのタイミングを逃さなかった。



「……三枝、なに味?」



自分はコーンに入った紫色のアイス(紅イモ味かな?)にかぶりつきながら、土居くんが私に訊いた。

なんてことない会話だし無視するのもおかしいから、私は普通に笑って答える。



「シークワーサーだよ」


「ちょっとくれ」



え、と拒否する暇もなく、私のアイスを持つ手は土居くんに掴まれて、そのまま彼の口元へと誘導されそうになった……のだけれど。



「――――サトウキビは、いかがですか?」



そんな声とともに、土居くんの口は大きな白っぽいアイスに塞がれていて。


掴まれていた手首が解放された瞬間、今度は土居くんにそんなことをした犯人に、同じ場所を掴まれた。



「走れますか?」


「……は、はいっ」


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