金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

ポインセチア


花が好きな私にとって、あまり好きではない季節が来た。

野山も、誰かの家の庭も、ほとんどの植物が色彩を失っていて寒々しい。

そのうえ、もうすぐ期末テスト。


いつもなら憂鬱極まりないこの季節だけど、私の心は浮き足立っていた。



『新潟……?』


『ええ。冬だからスキーはどうかと思いまして。
雪山で、ウエアに身を包んでゴーグルをつけていれば、万が一知り合いが居たって僕たちだと気付かないでしょう?』


『そう……ですね。でも私、スキーってやったことないです』


『大丈夫、僕が教えます。それにスキーがしたいというより千秋と過ごすための旅行ですから、無理せずゆっくり滑りましょう』



昨日、また学校の屋上で人目を忍んで逢い、先生が決めてくれた旅行のプランを聞いた。


午前中の新幹線に乗って、新潟のスキー場に行って、夜はその近くの旅館に一泊。

そして遅くならないうちにこっちへ戻ってくる、という短い旅行だけれど本当に楽しみで、その日を指折り数えて待ってしまう私。


出発はクリスマスの翌日。


どうしても仕事が忙しくてクリスマスにできなかったことを先生は謝っていたけど、そんな贅沢はしなくていい。


いつもより長く先生と居られるだけで、私は幸せだから……


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