金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

クラスのみんなには、来月正式な結果が出て本当に日本を離れることが決まってから発表すると先生は言っていたから、今は普通にしているのに……

土居くんはなにか勘づいているみたいだ。



「詳しいことは言えないけど、転勤……ってわけじゃない。でも、どうして……?」


「……こないだ、恩ちゃんが何故か部活見に来たんだ。そんとき俺を呼んで、“僕が居なくなったら、千秋のこと、代わりに見守ってやってほしい”って言うから……」


「それ、本当……?」


私は、教卓の所で女子に囲まれる先生を見やった。


私……ちゃんと待ってるのに。土居くんを頼らなくったって、ちゃんと……



「……俺は、それって奪ってもいいってことですかって聞いた」



土居くんは、凛とした声で話す。



「そしたら“それはダメです”なんて都合のいいこと言いやがった。“じゃあなんで側に居てやらないんですか”って聞いたら、“土居くんはいつも正論を言うので困ります”なんて笑ってごまかしてた。

でも、すげー寂しそうな笑顔だったから……恩ちゃんも離れたくて離れるわけじゃないんだなって思った」


「土居くん……」



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