金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「だから……約束したんだ。恩ちゃんが帰ってくるまで、“友達として”三枝の側に居て、お前を支えるって。

大学には、下心ある男もいっぱいいるだろうし……俺が近くに居れば、そういう奴らも避けられるだろ?
……ま、そのためにはまずこの模試の結果をどうにかしないといけないんだけどな」



最後はため息交じりに、結果の紙をぴらぴらさせながら笑った土居くん。


その優しさは、とても嬉しくて、苦しかった。

土居くんの気持ちには答えられないのに、そこまでしてもらうなんて……


私が浮かない顔でうつむくと、軽く頭を小突かれた。



「あのさ、恩ちゃんに頼まれたってのももちろんあるけど、俺がそうしたいからするんだからな?三枝はなんも気にしなくていーの」


「でも……」


「……うじうじしてると“友達として”って約束破るぞ?」


「それは、困る……」


「んじゃー黙って守られろ。しっかし俺、D判定はまずいなぁ……」



頭をがしがし掻きながら、土居くんは自分の席の方へと戻って行った。


私、修学旅行の時あんなにひどいことしたのに……

それでもちっともぶれない心を持った彼は、本当に優しくてかっこいい人だと思う。


だからこそ、いつまでも私に構っていないで、土居くんを本気で好きになってくれる子に出逢ってほしいな……

なんて、もしもそれを伝えたら、“余計なお世話”とか言われそうだけど……


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