金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「……でも、もうすぐだよね?帰ってくるの」
「うん……だけど正確な日にちは知らないの。わかったら連絡するとは言われてるけど、まだそれがなくて……」
「んもー、なにやってんだろ恩ちゃん……」
有紗がそう言って、テーブルに肘をつく。
せっかく久しぶりに会えたのに、私のせいで暗い雰囲気……
でも、大学にはこんな風に何でも話せる友達ってまだいないから……
どうしても、有紗の前で弱音を吐きたくなってしまう。
「――――ゴメンね、遅れて!」
そんな中、私のもう一人の親友が息を切らせて店内に入ってきた。
「菜月ちゃん!久しぶり!」
「あんまり急がなくていいのに!走ったりするのよくないんでしょ?」
菜月ちゃんは、にこっと笑って大きなお腹に手を当てると言った。
「本当はね。でも、二人に会えるの楽しみにしてたんだもん!この子にも頑張ってもらっちゃった」
――――そう、菜月ちゃんは現在妊娠中。
もちろん、お相手は高校時代から変わってないあの人だ。
菜月ちゃんは妊娠がわかると迷わず大学を辞め、木村先生と籍を入れたそうだ。