金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「予定日、いつだっけ?」
有紗が菜月ちゃんのための飲み物を持ってきてあげながら聞いた。
「11月10日。でももうお腹の中ですごい動くから、早く出たそう」
「触ってもいい?」
「もちろん!」
有紗と二人で、菜月ちゃんのお腹にそっと手を当てる。
足で蹴るとか、よく聞くけど……本当に、そうなのかな。
もしそうなら、どんな……
半信半疑でじっと待っていたら、ついにその不思議な感触が。
「わ、今動いた!」
「こっちも!うわぁ~なんか感動」
ぽこぽこ蹴る、と言うよりも。
うにょうにょと、中で大きく動いたみたいな感じがした。
興奮する私と有紗に、菜月ちゃんが言う。
「こないだね、性別がわかったの。女の子みたい」
「うわぁ……木村先生、超溺愛しそう。名前はもう考えた?」
「あ、それなんだけど……」
有紗の問いに、菜月ちゃんは言葉を濁しながら私を見た。
「千秋ちゃんに許可をもらわないとな、と思って」
「許可……?」
なんで、私に……?