金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「さぼっちゃ、だめですか……?」


私は小さく呟いた。


入学してから今まで、一度も休んだことはない。

授業だって、まじめに受けてきた。


こんな時くらいさぼったって、きっと神様は許してくれるよね……?



『千秋』


「はい……」


『僕は逃げたり隠れたりしませんから、授業が終わってからゆっくりあの家においで。

こっちで学びたくても学べない子供たちの現状を見てきた今、質の高い教育を受けられる恵まれた環境に居るきみのさぼりを認めるわけにはいきません』



……ああ、こんなところが、やっぱり恩田先生だと思う。

少しがっかりしながらも、先生の言うことが正しいとわかるから、私はそれに従う。



「……わかりました。でも終わったらすぐに行きます」


『うん……待っていますよ』



それから、他愛のない話を少しして、久しぶりの会話は終わった。


涙の跡を風が撫でるとひんやり冷たかったけれど、心にはあたたかいものが満ちてきていた。


先生に、逢える……


その約束さえあれば、私はこれからの二週間を強くいられる気がした。


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