金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「なんで……どうしてよ……!」


焦りと苛立ちばかりが募り、どんどん乱暴になる私の儀式。

それを止めさせたのは、扉の向こうのお母さんの声だった。



「……千秋、ちょっといい?」



私は肩で息をしながら、返事をする。



「……なに?」


「恩田先生が見えているんだけど……少し話をしないかって」


「―――っ!追い返してって言ったじゃん!!」



心が乱れてぐちゃぐちゃだ。

……お母さんにこんな態度を取りたくなんてないのに。



「ごめん、お母さん……でも本当に先生と話すことなんて何もないの。帰ってもらって……?」



私はまたアルバムに向き直り、さっきよりも控えめに、儀式を再開する。

すると扉越しに、今度は恩田本人の声がした。



「……三枝さん、お願いだから話をさせてくれませんか。きみはやっぱり苦しんでる。一人で抱え込まないで」



……また、どうせ。

親身になった振りだ。


私はアルバムに視線を落として胸の内で呟く。


アンタと一緒だよ、岡澤。

きっと恩田にも汚い下心があるに決まってる……


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