金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
部屋着に着替えて、電気もつけずにひとりひざを抱えていた。
どこにも行けない悲しみや悔しさが膨れ上がって、私の胸を圧迫する。
しばらくすると私は力なく立ち上がり、机に近づいた。
苦しいときは……また“アイツ”を突けば楽になれる……?
私の視線は、卒業アルバムに注がれた。
そして引き出しからいつものコンパスを出すと、儀式の準備を始める。
曽川先輩のことでこんなに傷つくのは、元を正せば岡澤のせいだ。
信じていた人に裏切られる痛みを、アイツが私の心と体に刻み込んだから……こんなにも、痛いんだ。
いつもより高い位置から、憎しみをこめて岡澤の写真を刺した。
一度なんかじゃなく、何度も、狂ったように……
――――でも。
何度腕を降り下ろして、岡澤を傷だらけにしても。
今日に限って心の平穏は訪れなかった。