* another sky *

私をソファーに座らせると、航太はキッチンに立つ。


勝手知ったる、私のこの部屋でコーヒーを淹れて。


「飲める?」


そっと手渡された、マグカップ。


コーヒーの良い香りが部屋中に漂う中で、私はこんなにも、震えている。



「玲。」



私は航太の顔を、見ることすら出来なくて…。


目を見てしまったら、認めてしまうことに、なる。


もう、お終いのような気がして。



うううん。


もう、お終いなのは、…わかってる。



ただ、頭がついていかないだけ…。




返事をしない私を見て、航太はもう一度、


「玲。聞いて欲しいんだ。」


と、説き落とすように言った。




私と航太には見えない壁がある。


どちらがつくった壁なのかは、わからないけれど。



「…玲?」



顔を上げない私の頬を、そっと包み込むと、優しい瞳で覗き込む。



「……っ。」



ねえ。




ねえ、航太。




今から、残酷な話をするんでしょう?





それなのに、そんな優しい顔で、笑わないでよ。




そんな顔、しないでよ。
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