* another sky *

この会社の中でも、トップに入るくらいの美貌。

さばけた男らしい性格。


研修中に、何度叱られたか、わからない。

泣かされた同期も、少なくない。

泣こうもんなら、放っておかれる。

甘えようもんなら、突き放される。


この仕事は、男だろうが、女だろうが、関係ないってことを、きっちりと教えてくれた。

桜木さんが育てた新人は、どこの部署でも通用するって、評価が高いことで有名だ。


飴と鞭の使い方が、絶妙、なんだよね。


どちらかというと、結婚なんて、興味が無さそうで。

キャリアを捨てるくらいなら一生独身でも構わない、なんて、自立した女性の印象だったのに。


社内恋愛で、しかも、結婚…。

しかも、お相手が、この、諏訪さん…。


イメージではほど遠く、桜木さんとは全く想像もつかない、真逆の相手だったから、私たちは本気でびっくりした。


しかも、――――。


桜木さんからの逆プロポーズ、だったっていうし。



「ほれ。早う、やってまえ。」


この諏訪さんに、どれだけの魅力があったのか…、謎。


「何やねんな。」


不可解な視線を送る私に、諏訪さんは怪訝な表情を見せる。


「いいえ、何も…。」


慌てて、机の上に置かれた図面に目を落とし、私は小さな溜め息を吐いた。
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