* another sky *

「そういえばさ。」


「何ですか?」


「おまえ、『アドバンス』の佐藤と、知り合いやねんな。」


「ああ…。はい。」



一昨日、―――――。



プレゼン会場で、佐藤君に会った。

一瞬、私の心臓は、動きを止めてしまったかのように、大きく跳ねた。


「…もしか、して…。」


意表をつかれたように、息を飲んで。

見開いたままの目線で、私を見入る。


「…玲ちゃん…だよね…?」


動揺した表情を見せながら、恐る恐る近寄ってきて、

「…玲ちゃんって『Green』さん、だったんだ。」

と、何ともいえない、溜め息を、吐いた。


お互い、戸惑いを隠せず、つい苦笑い…。


Greenさんとは私の会社の呼び名で、正式名称は『Green Fields』。

公園設計や都市計画などを手掛ける、景観設計を主軸とした会社で、私はデザイナーとして働いている。


「……っ。」


まさか、こんな場所で佐藤君に会うなんて。

予想だにしない衝撃で、心の準備が…出来ていなかった…。


「久し振り、だね。」


多分、引きつっていた、と思う…。

仕事でもしょっちゅう関わりのある、アドバンスに勤めていたなんて。

今まで出会わなかったのが、不思議なくらいだ。


きっとこんな偶然、たくさんある。


私は自分自身に、そう言い聞かせて、きゅっと、口角を上げて見せた。
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