* another sky *

「佐藤君、元気だった?」


一歩、自分から近づいて、背の高い佐藤君を、見上げる。


これからはこんな偶然があっても、動じないようにしなきゃ。


今、手がけている結婚式場の景観デザインは私が担当だ。

初めて全部任された、私にとって大切な仕事。


絶対に、成功させたい。

立ち止まってなんか、いられない。

私は前に、進んでいるんだから。


「あっ、ああ。
俺はね、いつも元気。」


「アドバンスさん、だったんだ。
今まで会わなかったのが、不思議だね。」


「いや、俺も…、驚いたよ。
Greenさんとは、よく一緒になるしね。」


「じゃあ、一緒に仕事出来ること、あるかもしれないね。
その時は、よろしくお願いします。」


口早に話をして、にっこりと笑う。


「…ああ。そうだね。」


何か言いたそうな佐藤君を背に、

「じゃあ、またね。」

と、諏訪さんの元へ駆け寄った。


指が、震えていた。

もう、こんな思いをするのは嫌だ。

ぎゅっと目を閉じて、呪文のように、言い聞かせる。


大丈夫、私は大丈夫…。

私は前に、進んでいる……。


「へえ、大学ん時の知り合いか。
佐藤って、仕事早いし、評判ええよな。」


「そう、なんですか?」


「ああ。なかなか出来るやつやで。」


「へぇ…。」


佐藤君の話は、もう、終わりにしたくて、適当に相槌を打つ。
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